福島県歯科医師会

福島民報 歯科コーナー
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3月19日掲載 歯の役割
発声、容貌 多様に関わり

 歯の一番重要な役割は「かむ」ことですが、歯にはかむこと以外にも、いくつかの大切な役割があります。そのことを実感していただくために、「さしすせそ」と発音してみてください。次に、前歯の裏に舌を触れずに「さしすせそ」と発音してみてください。どうですか?うまく発音できたでしょうか?
 歯を失うと、発音にも影響が出てきます。サ行以外にも奥歯を失うとハ行やラ行が発音しづらくなり、言葉が不明瞭になります。また、不正咬合(こうごう)の一つである下顎(かがく)前突(受け口)では、「f」や「v」のような上の前歯と下唇がこすれ合う「唇歯(しんし)音」が障害されます。
 もう一つ、歯には顔の形を整えるという役割があります。子どものころに虫歯が多かったり、歯並びが悪かったりすると、顔や口元の形に影響を与えます。例えば、かみ合わせが上下逆になる下顎前突のまま成長すると、顎のしゃくれた容貌になります。
 一方で、大人になってからも、歯の影響で容貌が変わってしまうことがあります。歯周病や虫歯を放置して右または左の歯ばかりでかんでいる、歯を失ったまま残された歯だけでかんでいるなど、歯にかかる力のバランスが悪いと、顔の形も左右のバランスが崩れてきます。また、歯の治療を怠っていると、かみ合わせや歯並びがずれてきて、顎関節症という顎の関節の障害が生じたり、変形から口元の印象が変わってきたりする場合があります。
 健康な歯は、快適な暮らしをもたらします。歯周病や虫歯で歯の健康を損なわないよう、正しい知識を持ち、かかりつけの歯医者さんとともに予防に努めたいものです。

3月5日掲載 ブリッジの注意点
連結部の衛生管理を

 歯を抜いた後に何らかの形で人工の歯を補う際、健康保険診療ではいわゆる「入れ歯」と呼ばれる有床義歯、または抜けた歯の両側の歯を連結してかぶせものをする「ブリッジ」のどちらかの方法で治療することになります。一般的に患者さんは取り外して手入れする「入れ歯」を敬遠する傾向があり、「ブリッジ」による治療を選ぶことが多いようです。
 ブリッジによる方法は、取り外して清掃する必要がなく、口の中での違和感も少なく、食事の際の感覚も天然歯の感覚に近いという利点もあり、いいことずくめのように感じますが、以下のような欠点も持ち合わせており、注意が必要です。
 まず、抜けた歯の両側の歯を土台にするため、健全な歯であっても削ってかぶせる必要があります。そして装着したまま外すことなく使用するのでブリッジの中間部と歯肉との間に汚れが停滞しやすくなります。
 また、抜けた歯の咬合(こうごう)する力を両側の歯で支えるため、土台になる歯に過剰な力がかかる危険性があります。そのほか土台の片側が外れても反対側で支えられてブリッジは脱離しないため、外れた側の虫歯が進行したり、歯肉が炎症を起こしたりするような場合もあります。
 ブリッジは連結部の清掃を普段から丁寧に行う自己管理と、定期的に歯科医院で状態をチェックしてトラブルを早期に発見・予防することで、長持ちさせることが可能になるのです。

2月20日掲載 歯科疾患の予防
三つの柱を上手に管理

 歯科疾患にはどのような種類のものがあるのでしょうか? 一般的に歯科といえば、むし歯や入れ歯を連想する方が多いのではないでしょうか?
 しかし、むし歯ばかりが歯科の疾患ではありません。代表的な歯科疾患としては、むし歯・歯周病・不正咬合(こうごう)の三つが挙げられます。その他に口腔(こうくう)領域外傷・顎(がく)関節症・歯ぎしり・いびき・睡眠時無呼吸症候群・口腔内腫瘍(良性・悪性)などがあります。
 むし歯と歯周病は歯科疾患の中でも生活習慣病として考えられています。
 むし歯の治療が必要とされる患者さんの多くは、歯肉炎や歯周疾患を併発していることが多く、むし歯だけを治療すればよいというわけにはいかない現状があります。
 二十一世紀は予防の時代と言われ、日本歯科医師会や厚生労働省も「8020運動」に代表されるように国民が歯科疾患の予防に対して無防備な結果として歯を失わないようにスローガンを掲げています。
 かかりつけ歯科医のもとで、予防、定期健診、治療という三つの柱を上手に管理した上で、健康ですこやかな生活とおいしく食べられる人生を目指して、多くの方々に「8020」を達成していただきたいのです。
 自分の健康と自分の歯は自分で守れるように、かかりつけ歯科医院がお手伝いいたします。

2月6日掲載 Bp製剤の副作用
顎骨壊死の報告が急増

 骨粗しょう症の治療や予防、乳がんの骨への転移予防として近年ビスホスフォネート製剤(Bp製剤)が整形外科や内科、外科などから処方されることが多くなっています。特に骨粗しょう症に対しては効果が高く優れた薬であるといえます。
 全国で300万人が服用や点滴を受けているとされていますが、現在骨粗しょう症の検査をしなくとも処方できるようになったため、もっと多くの方が使っていると考えられます。一方でその副作用であるBp製剤による下顎や上顎の骨が壊死(えし)する顎骨(がっこつ)壊死(BRONJ)の報告が急増してきています。
 顎骨壊死とは顎の骨が腐っていくような状態になることで、Bp製剤を服用している方に対して抜歯など血の出る処置をした場合に、少なくない割合で起こるといわれています。また、ステロイド剤をも服用している方や他に多くの全身疾患を持っている方はさらに高い確率で起きるといわれています。
 一度BRONJになると、それを治すにも進まなくするにも治療法が確立しておらず、顎の骨が折れるまで進むことも現実に起こっています。
 厳密には歯の神経を取る処置や歯石を取る処置も出血を伴う処置ですので、歯科治療が非常に困難になります。また、歯科治療をしなくても歯周病などからBRONJが起こる場合があります。
 現在のところ歯科治療を行う際にはBp製剤を中止して3カ月たってからやっと歯科治療に入れるとされていますが、薬が骨に取り込まれてからの半減期が10年から30年といわれており、3カ月たっても注意が必要です。
 2010年に注意喚起としてこの薬を出す際にはこれらのことを説明した上で出すようにとされましたが、ご存じだったでしょうか?
 虫歯も歯周病も基本的に症状が出ずになっていることが多く、特に歯周病は高齢者の8割くらいがかかっている病気です。既にBp製剤を飲んでいる方はもちろん、Bp製剤を飲み始める方も、その前に症状がなくても歯科健診を受けることをお勧めします。歯科治療中の場合は医師にその旨を伝えてください。

1月23日掲載 かみ合わせの異常
肩凝り、頭痛の原因にも

 顎(がく)関節症は現代病の一つといわれています。顎の関節の痛み、雑音、肩凝り、片頭痛、めまい、耳鳴りなどのほか、人によって多くの異なった症状が表れます。
 しかし、顎関節や咀嚼(そしゃく)筋に異常がなくてもかみ合わせ(咬合=こうごう)の異常からくる咬合異常関連症候群と名付けられる次のような症状が挙げられる病気があります。
 頭痛、鼻炎、肩凝り、背中の痛み、四十肩、五十肩、腰痛、目のかすみ、耳鳴り、難聴、手足の冷えやしびれ、つえがないと歩けない、声がかれる、痰(たん)がつまる、顔の肌荒れ、腹部膨満感、頻尿、便秘、下痢、心悸亢進(しんきこうしん)、低血圧、高血圧、生理痛、生理不順、昼間眠い、疲れやすい、姿勢が悪い、歩き方がおかしい、つえをつかないと転びやすい、慢性の倦怠(けんたい)感、かぜをひきやすい、うつなど。
 病院で検査してもらっても原因がはっきりしない慢性の肩凝りや片頭痛、耳鳴りなどの原因は、もしかしたら悪いかみ合わせにあるのかもしれません。
 念のために、顎をチェックしてみましょう。@口を開けるのがつらいA耳のそばで音がするB物をかんだり、あくびのときに痛みを感じたりするC口を開けるとき痛みを感じるDいつも頭痛がするEリウマチや痛風にかかっているFうつぶせ寝が多いGくいしばりや歯ぎしりがあるH頭や首に外傷を受けた。
 いかがでしたでしょうか。@の「口を開けるのがつらい」ですが、普通、大人が口を開くと、指二本分の幅は無理せずに開きます。あまり開かない場合は顎関節症が考えられます。特に@〜Cのうち、どれか一つでも心当たりがありましたら、かかりつけ歯科医に相談したほうがいいでしょう。

1月9日掲載 高齢者のケア
歯ブラシを口に入れないときは

 歯ブラシを口の中に入れさせてくれない方は、@口の衛生観念が乏しい方A認知症があるため認識できない方B口の中に痛みのある方 などが考えられます。
 口のケアが行われずに問題になるのは、虫歯や歯周病ばかりでなく、口にたまった細菌のかたまり(プラーク)や食べ物のかすが誤って肺に侵入することで起こる、誤嚥(ごえん)性肺炎などの全身疾患を併発する可能性が高くなるからです。
 @ 口の衛生観念の乏しい方の場合=口の衛生の重要性を理解し、磨くことの必要性を納得して
いただくことが大切です。食事がおいしくなったり、口臭が無くなりさっぱりしたりすることなどから理解を深め、根気強い努力と励ましが大切です。
 A 認知症のある方の場合=簡単な方法から慣らしていく方法があります。まずお茶を飲むこと
からはじめ、次にお茶で口をすすぐことができるようにし、そして綿球・綿棒・ガーゼなどを湿らせ、口唇、口の中と順に清拭(せいしき)を行って、歯磨きまでもっていくようにします。
 B 口の中に痛みがある方の場合=日常生活動作の低下に伴い、口のケアの拒否でしか痛みを訴
えられない方もいます。一度専門家に見てもらうことも大切です。
 いずれも、口にあったケアを探すことが必要です。

12月19日掲載 歯磨剤
好みの製品を選んで

 歯磨剤についてお話ししたいと思います。私たちが日々診療をしていると、患者さんからどんな歯磨剤を使ったらいいのですか、お勧めの歯磨剤はどれでしょうか−などの質問を受けることがしばしばあります。事実、歯磨剤は多種多様な製品が発売されております。 
 そのような質問に対しては、いつもどれでも必要かつ十分な効果があるので、どれでも大丈夫ですよ−とお答えしております。つまり自分に合った好みの製品を選んでよいことになります。もっと極論を言えば、歯磨剤は使用しなくても問題ないですよという意味です。
 では、歯磨剤を使用している方と使用していない方とどう違いがあるかと考えると、一番は茶しぶなどの付着が取れやすいかどうかであると思われます。歯磨剤には研磨剤が入っているものが多く、その作用で茶しぶなどが取れやすくなるためです。
 現在歯磨剤のほとんどにフッ化物が配合されていて医薬部外品の表示があります。フッ化物配合歯磨剤は、幼児期・学齢期のう蝕予防だけではなく、口腔ケアが必要な方の根面(こんめん)う蝕(しょく)の予防にも効果がありますが、磨き方も大事になります。
 では歯磨剤はどの程度の量を使用すればよいのかということになります。量は歯ブラシのブラシ部三分の一程度で十分かと思います。
 最近世の中はエコの時代です。歯磨剤も適切に適量使用しましょう。

12月5日掲載 神経を取ったのに痛い
歯の外側組織が炎症

 歯が痛くなり、来院した患者さんに「この歯は、以前神経を取ったはずなんですが、どうしてまた痛くなるんですか?」と聞かれることがあります。
 歯の中には歯髄腔と呼ばれる穴が開いており、その空洞にいわゆる歯髄と呼ばれる神経組織や血管が入っています。この歯髄が“歯がしみる”とか“むし歯で痛む”という感覚の元になっているため、むし歯が深くなって細菌が歯髄に入り込むと炎症を起こして激しい痛みを生じます。
 こうした場合、麻酔をして歯に穴を開け、歯髄腔の中の歯髄を除去して消毒した後に根充剤という薬を歯髄腔すべてに詰め込んで封鎖する治療を行います。歯髄の処置をした歯のことを無髄歯と呼びますが、この無髄歯は歯の中に神経がないため、いわゆるしみる感じとか、むし歯で痛むというような感覚は生じません。ではなぜ痛くなるのでしょう?
 無髄歯が痛くなる多くの原因は、歯根膜と呼ばれる歯と歯を支える歯槽骨との間にある組織の炎症です。つまり歯の外側の組織が痛みの元になっていたのです。この歯根膜が炎症を起こすと、歯をたたいたり、物をかんだりするとひびくような痛みを生じ、炎症が増悪すると自発的な痛みも出てきます。また、炎症が広がると腫れて膿(うみ)がたまることもあります。
 歯根膜の炎症が慢性化すると、腫れや痛みはなくなりますが、徐々に周囲の骨を溶かしてしまい、難治性の膿の袋を形成することもあるので、早めに治療することが望ましいでしょう。

11月28日掲載 受け口(反対咬合)
早期治療 必要な場合も

Q 永久歯が生えそろうのは何歳頃ですか?
A すべての永久歯は、小学6年生の12歳頃生えそろいます。
Q 乳歯が残っている時期から矯正治療が必要なケースとはどのような場合なのでしょうか。
A 特に歯ならびの方ではなく、上顎と下顎の大きさのバランスが悪い場合です。特に遺伝的な要素が大きい反対咬合(こうごう)です。
Q 遺伝的な要素が大きい反対咬合について詳しく教えてください。
A 大きく分けて3種類あります。上下の顎のバランスには問題が少なく前歯のみが反対にかんでいる歯性タイプA上下の顎が前後にズレており、反対にかんでいる骨格性タイプB筋肉のバランスが悪く反対にかんでいる機能性タイプです。
Q  反対咬合の中にもタイプがあるのですね。
A  歯の傾きのみが、反対になっているタイプや筋肉のバランスが悪いケースなどでは、治療も比較的急ぐ必要もありませんが、早期に治療が必要となるのは上顎と下顎の大きさのバランスが悪い骨格性タイプの場合です。特に遺伝的な要素がある反対咬合では、成長期に下顎の発育が著しく、早期に顎の成長を抑制しなければ、将来的に顎の骨を切らなければならない手術が必要となる可能性が高くなります。反対咬合の治療は、各タイプによって治療方法や開始時期が異なりますので、詳しくは専門医に相談して適切なアドバイスを受けてください。

10月31日掲載 喫煙が口に与える影響
歯周病やがん 発生しやすく

 喫煙が全身の健康に対して悪影響を及ぼすことは、比較的広く知られています。そのため今では、喫煙をしている人のうち、半数以上の人は禁煙したいと望んでいると言われています。しかし、禁煙したくてもなかなかできない場合が多く、その要因は主にニコチン依存による要因と心理的要因の2つです。
 喫煙者が禁煙を開始すると、さまざまな離脱症状が現れてきます。イライラしたり不安にさいなまれるようになったりするケースもあるようです。しかし、喫煙の影響を自分ではっきり見ることができれば、今まで禁煙できなかった人も禁煙の方向にグッと踏み出せるでしょう。
 喫煙が口に与える影響については、まだまだそれほど知られていないようですが、実は口は誰もが喫煙の影響を直接観察できるところなのです。喫煙で歯の表面にヤニが付くことや口臭の原因になることはご存じでしょうが、粘膜の色素沈着、歯周病、歯の脱落、口腔(こうくう)がんなどさまざまな問題が発生しやすくなります。
 喫煙をしているあなた。歯の周囲の歯ぐきにメラニンが沈着し、黒ずんでいませんか?口の粘膜は、薬物などを非常に吸収しやすい組織なので、喫煙の影響がたちどころに表れるのです。そんな変化が体の中でもどんどん進行しているとしたら、それはとても怖いことですよね。
 さあ、今日から禁煙始めてみませんか?

10月17日掲載 歯周病
歯を失う最大の原因

 日本人の平均寿命は女性86歳、男性79歳と、世界最高水準を維持しています。一方で、歯の寿命はというと、早い人は30歳代半ば頃から残存歯数が減り始め、80歳を超えると残存歯数は9本以下になってしまいます。
通常、永久歯が生えそろったときには、上下合わせて28本の歯を持っていますから、80歳以上では実に3分の2以上の歯を失っているということになります。
 高齢になるほど残存歯数が減るということは、歯が抜けるのは老化現象の一つなのでしょうか?
 実は、歯を失う原因は、「歯周病」が42%、「むし歯」が32%となっています。従来、日本人はむし歯で歯を失うことが多かったのですが、ライフスタイルの変化や高齢化に伴い、近年は歯周病で歯を失う人が増えてきました。特に高齢になるほど、歯周病で歯を失う比率が高くなっています。
 わが国では、成人の8割以上が歯周病にかかっていると言われています。歯周病は、回復の余地のある初期段階の「歯肉炎」から、回復が困難な「歯周炎」へと進行する病気です。中でも、歯周炎へと移行している人の割合をみると、45歳以上の3割以上にも上ります。
 歯周病の多くは、はっきりした症状のないままに進行し、数年かけて歯を失うレベルにまで悪化します。歯が抜けるのは老化現象ではありません。つまり、歯肉炎に移行する40歳代前から歯周病の予防・治療を徹底すれば、自分の歯を失わずに済むといえます。
 生涯、自分の歯でかめる生活を維持できるか否かは、歯周病という病気を正しく理解し、セルフケアを実践するとともに、よりよい治療を受けるためのかかりつけ歯科医を持つかどうかにかかっているといえましょう。

10月3日掲載 口を取り巻く筋
バランスが良いことって?

 歯列には外側から口唇や頬からの力が、内側から舌の力がかかっています。この力のバランスが釣り合っているところに歯が落ち着くと言われています。
 正常咬合(こうごう)の人には筋のバランスが良い人が多いようです。一方、いつも口をポカンと開けていたり、口で呼吸をしたりしている場合、外側からは力がほとんど加わっていないことになり、前歯は外側に出てきやすい状況にあります。
 普段、上下の前歯の間から舌がはみ出していたり、舌が力なく下の歯列にあったりする状態(低位舌)では、前歯がうまく合わず、ものをかみにくくなることもあります。
 また、こうした舌を出す癖や指しゃぶりなどが長期間続いていると、歯槽骨(歯を支えている骨)が変形してしまいます。このような好ましくない癖のことを“口腔(こうくう)習癖”と呼んでいます。
 歯並びやかみ合わせとも密接な関係があり、咀嚼(そしゃく)、嚥(えん)下、発音などにも影響し、場合によっては顎の成長に影響することがあります。習癖があると必ず不正咬合につながるというわけではありませんが、習癖の様相、力の強さ、頻度、期間などによりさまざまな形として現れてきます。
 筋のバランスが整っているというのはどのような状態か。リラックスしている時には次のような状態が良好と言えます。
 ・口唇は軽く閉じ鼻で呼吸。
 ・舌は口蓋(上あご)に軽く接し、前歯を押していない。
 ・上下の奥歯は軽く離れる。
また、食べる時、飲み込む時には、次のような状態が正しいと考えられます。
 ・前歯で食べ物をとらえ、口唇は軽く閉じ、舌で奥へ送り、奥歯でよくかみ砕く。この時にクチャクチャという音が出ない。
 ・すりつぶされた食塊を舌の上に一気に集め、口蓋との間に密閉させる。
 ・飲み込む時には歯がしっかりと合わさり、舌が突出しない。
ご自分やお子さんの確認をしてみてください。

9月19日掲載 入れ歯安定剤
定期的な調整必要

 時々患者さんらに入れ歯安定剤は何がいいか聞かれることがあります。
 そういう時は「基本的にはかかりつけの歯医者に行って診てもらう」ことを勧めますが、以下のような話をしています。
 安定剤には大きく分けて3つあります。 
 1、ゲル状で粘るタイプ
 2、ペースト状で粘り気のないタイプ
 3、粉状で粘るタイプです。
 1と3は入れ歯を外した後も口の中の粘膜にも入れ歯にも安定剤が残ってしまい、きれいに清掃するのが難しく、口の粘膜が炎症を起こしてしまいます。炎症が長く続くと歯ぐきが痩せて早期に入れ歯が合わなくなる原因にもなりかねません。
 2は清掃の点では問題は少ないと思いますが、かむ場所がずれると、残っている歯や顎に負担がかかり、痛めることがあります。
 先生によって何を勧めるかはまちまちですが、安定剤を使えばいつでもいい具合にかめるとは限りませんので、なるべく早く歯医者に行ってください。そして、定期的に調整をしてもらってください。そうすれば、安定剤は使わなくても済むと思います。

9月5日掲載 歯の健康と歴史
江戸時代にハミガキ粉

 人間の歯の歴史を見てみましょう。縄文から弥生の時代には、クルミやドングリなどの堅い木の実を主食としていたため、顎が発達し、歯並びは良かったが、歯は著しくすり減っていました。
 また、むし歯がなくても抜歯する奇妙な風習がありました。これは成人式の儀式の一つで、当時は抜歯の苦痛に耐えることで立派な大人と認められるとか。大人になるのも楽ではなかったようです。
 平安・鎌倉・室町の時代には、特に平安時代に、大陸から伝来した医学の概念は、丹波康頼によって「医心方」というわが国最初の医学書にまとめられ、仏像、能面などの木彫技術から独自の木床義歯(入れ歯)が生まれました。
 江戸時代になると、いっそう日本の入れ歯の技術が進み、現在と同じく床の吸着によって維持する大床義歯があったそうです。欧米では、1800年頃にやっと実用化に成功した方法を、日本では200年も前に先取りしていたのです。
 さらに当時はすでにハミガキ粉が商品化されていて、石灰の粉末に香料を加えたものが、なんと百種類も発売されていました。宣伝競争も激しく、引札(チラシ)を配ったり、いろんな芸を見せたりしての販売合戦。それほどに、ハミガキ粉は流行の先端をいく人気商品だったのです。
 また、忘れてならないのがお歯黒です。既婚女性の化粧として知られていますが、このお歯黒の成分が、歯の蛋白(たんぱく)とリン酸カルシウムの溶解を防ぐ働きを持ち、むし歯予防効果があったのです。
 幕末の1860年、外国人歯科医、イーストレーキが来日。わが国の歯科学の発展に影響を与えました。明治7年には最初の金属製治療椅子が作られました。現代は、コンピューターを駆使した最新技術が次々と導入されてきています。

8月22日掲載 口腔ケア
日々の生活習慣として

 「生活習慣病」という言葉がいつのころから使われだしたのか、定かではありませんが、糖尿病、動脈硬化症、メタボリックシンドローム等々、全身的な病気については、ごく一般的に語られるようになってきました。
 では、「歯周病」、「歯周疾患」というお口の中の病気についてはどうでしょう。例えば、一般的な健康診断や人間ドックなどのメニューの中に、「歯周病に関する検査」などという項目を見掛けたことのある方がいらっしゃるでしょうか。たぶん、いらっしゃらないと思います。
 ところが、疾病の罹患(りかん)率(病気にかかっている人の割合)から見ると、50〜60代の方では、約7?8割の人に「歯周病」が見られると言われています。しかも、最近では、その歯周病菌が、糖尿病や動脈硬化、脳梗塞、心筋梗塞などを悪化させているという研究結果が発表されています。
 まず、「歯周病」は生活習慣病の一つであるということ。しかも、他の全身的「生活習慣病」の原因や増悪に強く関与しているということです。
 ちょっと、おどろおどろしい話になってしまいましたが、「歯周病」は、科学的にも解明されつつある「生活習慣病」であり、全身にも悪い影響を及ぼしているということです。
 さて、皆さん、今日からもう一度、ご自分のお口の中のチェック、歯みがき(歯垢清掃、プラークコントロール)の再点検を!

8月1日掲載 学校歯科について
必要に応じ学習、指導

 6月22日は何の日かご存知ですか?あまり知られていませんが、その日は「学校歯科医の日」となっています。なぜ6月22日が?と思われる方も多いと思いますが、6月4日の「虫歯予防デ―」や11月8日の「いい歯の日」のような語呂合わせではなく、昭和22年6月22日に学校歯科医という制度が発足したため、毎年その日が学校歯科医の日となっています。
 当時、子供の虫歯が非常に多く、主に虫歯の早期発見・早期治療に重点をおいた歯科健診が中心でした。そのため今でも学校歯科医は歯科健診だけを行っているイメージが強いのですが、現在の学校歯科保健活動は学校教育の一部で非常勤講師として児童・生徒の健全な生活を支えるという考え方に基づいて、歯科健診の結果を基に学校保健会議などで保健活動の方針を相談し、必要に応じて歯科保健学習や指導を行うようになっています。
 ちなみに「歯科健診」も「歯科健診」に変わりました。つまり「虫歯がないか検査する」のではなく、歯肉炎や歯並び、顎の状態なども含めて「口の中やまわりが健康であるかの診断をする」というものに現在はなっています。
 また、歯周病などが全身に影響を及ぼすことが分かってきています。ご年配の方のお口の健康は成人から、成人のそれは学童期からと全てのライフステージはつながっていて、将来にわたる全身の健康の第一歩であること、また児童・生徒が歯科に触れることによって学校の先生方や保護者の方、ひいては地域全体がお口の健康に興味を持ってもらい、皆さんの健康に少しでも寄与できれば幸いです。

7月18日掲載 ストレス、疲れが起こす歯・口のトラブル

 3月に発生した東日本大震災により、多数の人が被害に遭い、避難所や仮設住宅では厳しい環境の中で多くの人々が生活をしています。
 唾液が出る量をつかさどっている神経は交感神経と副交感神経と言い、緊張して交感神経が優位になると唾液が出なくなり、リラックスして副交感神経が優位になると唾液が出るようになります。大震災によりストレスや疲れが多くなると交感神経が優位となり、唾液の分泌量が少なくなります。唾液の分泌量が減ると虫歯になりやすく、口臭の原因ともなります。
 また、ストレスによって歯ぎしりが起きれば歯の表面にごく微小な割れ目が発生し、その割れ目に細菌が侵入したら虫歯の始まりです。
 大震災前まで何ら症状が無かった歯でも、ストレスや疲れから体の免疫力が低下して歯が浮く、歯ぐきが腫れることが多々あります。そのような症状が出ましたら、かかりつけの歯科医院を受診して、規則正しい生活と口の中を清潔に保つことを心がけてください。

7月4日掲載 歯によいおやつとおやつの時間
虫歯になりにくい糖を

 子どもは、甘い物が大好きです。あればあるだけ食べてしまいます。歯科医としては、どうしても甘い物に警戒警報を出さざるを得ませんが、とはいっても全ての甘い物がいけないわけではありません。特に虫歯になりやすい食べ物は、砂糖の入っているお菓子やジュース類です。
 例えばチョコレート、キャンディー、キャラメル、ケーキ、清涼飲料水などです。キャンディー、キャラメル、ガム(砂糖入り)は、口の中に砂糖が長い時間残るので一番虫歯になりやすいと言えます。それに比べて、果物やはちみつに含まれる糖は、比較的虫歯になりにくい糖です。甘い物を選ぶときの目安にすると良いでしょう。
 ところで、虫歯を予防することを考えると、おやつは「お菓子の時間」ではなく「間食の時間」というふうに考えた方がいいと思います。おにぎり、ホットケーキ、パン、果物などにジュースや乳酸飲料ではなく、牛乳や麦茶などを飲みものとして添えるのが良いでしょう。そのとき大事なことは、朝、昼、晩の三度の食事に影響を与えない量にすることと、だらだら食べさせないようにすることです。
 一番虫歯になりやすいのは、小学校を卒業するくらいまでです。経験から言えば、その時期に虫歯にならなければ、大人になっても虫歯で苦労することが少ないように思います。
 親が気をつけてあげれば子どもの虫歯は減りますし、その子が大きくなっても虫歯で痛い思いをすることが少なくなるのです。
 おやつは「お菓子の時間」ではなく、「間食の時間」、これをぜひ実行してみてください。
 また、かかりつけの歯科医院での定期健診も忘れずに。

6月20日掲載 子どもの指しゃぶり
 習慣化で発達に影響も

 「うちの子はなかなか指しゃぶりがやめられないんです」と相談を受けることがあります。指しゃぶりはお子さんがお母さんのおなかの中にいる時から行っています。これは出生後、母乳を飲むために乳首を吸う練習をすでに行っているもので、指しゃぶりは生きるために必要で不可欠な行為なのです。
この行為はお子さんが成長し、乳歯の奥歯(第一乳臼歯)が萌出する一歳六ヶ月ごろになると、顎の動きが開閉口のみから側方へも動かせる咀嚼(そしゃく)運動ができるようになり、自然と消失します。
 しかし、何らかの原因で指しゃぶりがやめられないと、習癖として残ることがあります。習癖となる原因はいくつか考えられますが、咀嚼機能がうまく発達せず、よくかむことができない場合があります。
また、心理的な要因、ストレスなども関与するといわれています。このストレスは、第二子の誕生や転居などの育児環境の変化による不安などからも起こります。指しゃぶりはこれらのストレスを鎮静させるために無意識に行う動作と考えられます。
 以上のことから、まずは指しゃぶりがやめられなかった原因を考え、その原因が残存するのであれば可能な限り除去してあげたいものです。また、思い当たる原因がない場合、お子さん本人に指しゃぶりをしていることを自覚させることも大事です。
指しゃぶりの習慣化により、食べる・話すといった口の機能の発達を妨げる可能性が高くなりますと、摂食や発育の障害を引き起こすこともあります。
歯並びに変化が生じ、上下の歯の間に隙間ができてかみ合わなくなったり、反対咬合(こうごう)になっていたりするようでしたら、かかりつけの歯科医への相談をお勧めします。

5月30日掲載 スポーツとマウスガード
 自分の口に合わせて

 スポーツの時に、転んだり、ほかの人とぶつかったり、用具が当たったりという事故は少なくありません。また、ぶつかり合うこと自体が目的のスポーツもあります。それにより、歯が抜けたり折れたり、歯肉や粘膜を傷つけたりすることがあります。
マウスガードは、マウスピースやマウスプロテクターともいい、スポーツ時に歯に装着して歯と口のけがを予防したり、軽くしたりするための安全具です。マウスガードを装着することで接触時の衝撃が緩和され、歯が抜けたり折れたりするような場合でもぐらつく程度に軽減できるといわれています。
また、脳への衝撃が軽減され、脳振とうや頚椎(けいつい)損傷を防いだりする効果もあるといわれています。選手同士がぶつかっても、マウスガードをしていれば、歯で相手を傷つけるのを防ぐことにもなります。
マウスガードは、スポーツ用品店などで市販されている既製品のほか、キットを使って自分で歯に合わせるタイプ、歯科医院で作ってもらうタイプのものがあります。しかし、マウスガードは自分の口に合っていてこそ有効性が発揮されます。ですから、歯科医院できちんと検査して作ってもらうのがいいでしょう。

3月7日掲載 かむ健康法
肥満防止、ぼけ予防も

 最近さまざまなダイエットの方法が紹介されていますが、百年も前にアメリカでフレッチャーさんが発表した「かむ健康法」が話題になったそうです。
 内容は「本当におなかがすいた時に食事をとり、何でもよくかみ口の中でとろとろになり自然に飲み込まれるようになるまでかむ」というものだったそうで、5ヶ月で30キロの減量に成功したそうです。
 私たちの食欲は脳にある二つの「食欲中枢」でコントロールされています。一つは空腹を感じ、食べることを指令する「摂食」中枢で、もう一つは食べるのをやめるよう指令する「満腹」中枢といわれるところです。
 満腹中枢が活発だと食欲が抑えられますが、活発になるのに、食事を始めてから15分経過してからといわれています。ですからフレッチャーさんのように「よくかむ」ということは当然食事の時間も長くなるため、理にかなっているといえるでしょう。
 斎藤滋神奈川歯科大教授によると、弥生時代の1回の食事時間は50分程度で、そしゃく回数は4000回。それが戦前では1回の食事時間は22分、そしゃく回数1400回。現代においては1回の食事時間11分、そしゃく回数620回と戦前からみても半分になってきているのがわかります。もちろんそこには食生活が豊かになり、食べ物が柔らかくなってきていることもあると思います。
 しかし、かむということは肥満防止だけではなく視力低下、ぼけ、がんなどを予防し、内臓の働きを助け、大脳の働きを活発にし、また精神を安定させるなどさまざまな効果があるといわれています。このいいことずくめの「かむ健康法」、ためしてみる価値はあるかもしれませんね。

2月21日掲載 入れ歯のお話
毎晩はずして洗って

 入れ歯をお使いの皆さん、入れ歯をどのようにお使いでしょうか?
 入れ歯の大部分はアクリル樹脂という歯よりかなり軟らかい材質でできています。そのため、落としたり乱暴に扱うと、傷ついたり壊れたりします。傷ついたところには、汚れが付きやすくなり、そのために残っている歯にも汚れが付きやすくなってしまいます。
 また、夜寝るときに、入れ歯を入れたままの方もいるかと思いますが、これですと、寝ている間は唾液があまり出ないために、口の中でまた汚れてしまいます。
 では、どうしたらいいでしょう?実は簡単です。入れ歯を毎晩はずして洗えばいいんです。先にも言いましたが、入れ歯は軟らかいので、力任せにゴシゴシ洗うのではなく、やさしくこするようにして洗ってください。
 そして、きれいになった入れ歯を水の中に入れてお休みください。入れ歯は、乾燥すると変形して、痛みの原因になることがありますので、痛みの予防のためにも、水に入れてください。できるなら、除菌のできる洗浄剤に一晩入れておくのもいいと思います。
 詳しいことは、かかりつけの歯科医院でご相談ください。

2月7日掲載 歯周病の糖尿病への影響
インスリンの働き低下

 糖尿病があると歯周病になりやすく歯周病が悪化しやすいことはよく知られています。糖尿病の方はそうでない方の2倍以上の歯周病の罹患(りかん)率があり、血糖値のコントロールが悪いほど歯周病も悪化しやすいのです。また、糖尿病の罹患期間が長い方ほど歯周病が重症化することが知られています。
 ところが最近、逆に歯周病が糖尿病を悪化させることが分かってきました。歯周ポケット(歯と歯肉の境目の溝)の中に歯周病菌が増殖すると白血球がこれと戦うために集まってきます。この時、白血球からTNF―αと呼ばれる物質が放出されます。このTNF―αは慢性の炎症があるところで作られるたんぱく質で、インスリンの働きを妨げる作用があります。歯周病でTNF―αが多くなるとインスリンの働きが低下し糖尿病が悪化することが分かってきました。
 糖尿病が進行すると、さらに血糖値が高くなり、今度は歯ぐきの毛細血管の血流が悪化、血液が行き渡らず歯周病菌が増えてしまうのです。この状態が歯周病と糖尿病の悪化のスパイラルです。
 歯周病が重度な場合に糖尿病の予後が悪くなるという報告や、歯周病を治療すると糖尿病が軽快したという報告があります。
 糖尿病と診断された方は特に歯科医院に定期的に通院して、歯周病の予防と管理に注意をする必要があります。

1月24日掲載 かみ合わせの違和感 顎関節症
あごにだるさや痛み

 顎(がく)関節症という病気を聞かれた方も多いと思います。あごにだるさを感じたり、疲れたりすることから始まり、そのだるさがひどくなってあごを動かす時に痛みを感じるようになります。
 また、口が途中までしか開けられなくなったり、カクカク、シャリシャリなどの雑音がしたりすることもあります。あごだけに限らず頭痛やめまい、耳鳴り、肩こりなどの症状を伴ったりするケースもあります。
 この原因にはいくつかありますが、常に上下の歯が触れている、頬づえ、睡眠中の歯ぎしり、くいしばりなどの癖が要因となり、それが積み重なって症状が出ます。
 また、抜けた歯をそのままにしておいて片側だけで噛(か)んでいたり、合わない義歯を使用していると、顎関節や咀嚼(そしゃく)筋に過度の負担がかかります。精神的ストレスがあると筋が過剰に緊張したり、大口を開けるなど不自然な力が顎関節に加わると発症につながったりします。顎関節症は決して珍しい病気ではなく、日常生活のちょっとしたタイミングで起きてしまうことがあります。
 治療は病態により異なります。咀嚼筋の過剰緊張では、筋弛緩(しかん)剤や理学療法、あるいはバイオスプリント療法といってマウスピースのようなもので異常な刺激を遮断し、神経と筋肉のバランスを調整したりします。しかし、あごの関節内に障害が及んでいる場合は手術を要します。いずれにしても先に挙げた日常の癖を直したりして自分自身でリハビリをしてもらうことで症状が改善することがありますが、あごの症状が続くようであれば歯科医院を受診してみてください。

1月10日掲載 おいしく食べるためには
口のリハビリ、食前体操

 病気や障害、またその後遺症で寝込んでしまった時に、使わなくなった筋肉や神経は衰え機能が低下します。
 かむ機会が減ると、唾液の分泌も少なくなり、食べたり飲んだりする時の「誤嚥(ごえん)」の問題が起こったり、味覚やお口の衛生状態にも悪影響が出てきます。  
 水泳やマラソンの前に準備体操をする人は大勢いますが、のみ込む力が弱っている人にとっても、準備体操はとても大切です。無理をせずに、個人個人のペースで行ってみてください。  
 1、ゆったり腰を掛け深呼吸をしましょう(鼻から息を吸い口からゆっくり吐きます)。
 2、深呼吸をしながら首をゆっくりまわします。
 3、肩の上げ下ろしと、肩をゆっくりまわします。
 4、両手を上げて筋肉を伸ばしましょう(まひのある人は健康な側だけでも構いません)。
 5、口を閉じたまま頬を膨らませたり、唇を突き出したりしましょう。
 6、口を大きく開いて舌を出したり引っ込めたりしましょう。
 7、口を開いたまま舌を左右に出し口角を触りましょう。
 8、「パパパパ」「タタタタ」「カカカカ」「ララララ」とゆっくり発音しましょう。
 9、ゆっくり深呼吸をしてゴクンとのみ込むまね(実際に少し唾液をのみ込んでも構いません)を2〜3回やってみて、のどの動きを確かめてから、さあいただきましょう。

12月20日掲載 子どもの虫歯は誰のせい?
保護者が管理、通院を

 現在、未就学児の歯科健診は1歳6ヵ月、3歳で行われています。この健診で指摘を受け、初めて歯科医院の門をくぐるお子さんもたくさんいらっしゃいます。健診以外でも、保育園や幼稚園の健診や痛み、転んだなどの外傷や仕上げ磨きの際に気になって来院される場合などさまざまなケースがあります。
 子どもたちを見ていると口の中もさまざまです。20本しかない乳歯のほとんどが虫歯という口の中もあります。ひどい場合は、こちらも「ご飯は食べられているのだろうか?」「今までこの子は痛いと訴えなかったのだろうか?」と心配になることもあります。
 食育という言葉を耳にすることが増えましたが、食育とは食べ物だけでなく、食べ物をかみ砕く歯がきちんとされているかということも重要です。一般的には小学生ぐらいまでは保護者が管理してあげるべきだと考えます。しかし、時として保護者が管理できないケースもあります。
 例えば、他の兄弟に手が掛かったり介護を要する人がいたりする場合、家の中がバタバタしている場合は、余裕をもって育児するのが難しいこともあります。「子どもの虫歯は母親のせい」と周囲の人に中傷されたと涙ながらに訴えたお母さんもいらっしゃいました。
 ただ、虫歯はすべての子どもたちに対して完全に予防する方法が確立しているわけではなく、リスクの高いケースなどは、注意していても虫歯が生じてしまう場合もあります。虫歯ができないことに越したことはありませんが、できた虫歯を早期に治療するために歯科医院を訪れることを切に願います。

12月6日掲載 口の中の細菌
動脈硬化性疾患に関与?

 「歯周病」とは、細菌(歯周病菌)の感染によって、歯茎などの組織に炎症が起きる病気です。最近、歯周病は口の中の問題だけでなく、さまざまな全身性の病気とも深く関わっていることが明らかになってきました。
 例えば、歯周病菌が動脈硬化部位に見つかるという事実がカナダや北米の研究グループから報告されています。
 また、東京歯科大の研究グループも、腹部動脈瘤(りゅう)の部位に歯周病菌の一つであるスピロヘータを見つけたという報告がありました。この細菌は、培養細菌を用いた実験で血管内皮細胞に侵入できることも明らかになっています。
 それではなぜ口の中の菌が離れた場所で発見されるのでしょう。おそらく歯周ポケット内の細菌が、歯肉の上皮を通りぬけ血管内に入り込み、さまざまな場所に送られていくのではないかとみられています。
 特に先にあげた動脈硬化性疾患の発症では、歯周病菌がつくりだす毒素成分(内毒素)が血液中に運ばれ、血管壁などでコレステロールの沈着や細胞障害を起こすことに関与しているとみられています。
 従って動脈硬化、ひいては心筋梗塞などの発症を防ぐためにも、歯周病が進行していると思われる場合、歯科にて治療や指導を受けた方がよいでしょう。

11月22日掲載 初期むし歯の治療
 歯科医院で定期診察を

 最近の歯科治療は、できるだけ歯を削らない方向で治療するようになってきています。特に初期の場合、むし歯であっても定期的に診察して全く削らない場合もあります。
 口の中のむし歯菌は、食品の特に糖質から酸をつくり、歯の表面のエナメル質を溶かしはじめます。これを脱灰といいます。また、唾液(だえき)の作用によって数十分すると、口の中は中性に戻り溶けた歯が補修されます。これを再石灰化といいます。再石灰化を促すはみがき剤やガムなども市販されています。
 しかし再石灰化の効能に期待しすぎるのは大変危険なことです。再石灰化で修復されるのは肉眼では確認できない顕微鏡的なレベルの話だからです。本人がむし歯かなと気付いた時点で初期を通り越していることがほとんどだと考える方が正しいのです。歯科医師に注意深く観察してもらい、治療した方がいいのか、経過を見た方がいいのかを判断してもらう必要があります。
 さらに最近の考え方としては、むし歯になりやすいと分かっているむし歯リスクの高い人は早めに治療して、逆にむし歯リスクの低い人は経過を見るという場合も増えています。
 また、特に子どもの場合、生えたばかりの歯のむし歯が驚くほど早く進行する場合があります。この場合、むし歯の部分は黒ずんでくる前にどんどん深くなってしまいます。この場合もかかりつけの歯科医院で定期的に診てもらうことが大切です。

11月1日掲載 ドライマウスと歯周病
 女性に多く40〜60代中心

 口が渇く病気−ドライマウスが、若い人から高齢の方まで広い年齢層に広がっています。少し口が渇く程度から、渇きすぎて話ができない、味がわからない、舌がひび割れてしまったなど、非常に多くの病状があります。ドライマウスで悩んでいる方は推定で約八百万人といわれていますが、圧倒的に女性に多く、四十〜六十歳代が中心です。
 原因はいろいろあります。大きく分けて次のように考えられています。
@シェーグレン症候群(自己免疫疾患によるもの) A糖尿病、腎疾患などの全身疾患によるもの B薬剤の副作用 C唾液(だえき)腺の疾患によるもの D加齢 Eストレス F口呼吸や喫煙、過度のアルコール摂取など Fその他の要因。
 シェーグレン症候群とは、唾液腺、涙腺などの外分泌腺に関係する自己免疫疾患で、口の渇きや目の乾きが特徴です。ドライマウスの原因のうち、かなりの割合をシェーグレン症候群が占めていて、全体の約30%がこの疾患に由来しているといわれています。
 ドライマウスの治療は、原因ごとに対処します。歯科医は、問診や口腔(こうくう)内診査を行い、適切な処置を施します。
 しかし、薬剤による副作用が原因と診断した場合、その薬剤の使用を中止できれば良いのですが、それによってリスクが生じることがあります。薬剤の変更、減量、中止に関しては、必ず、疾患の主治医の先生と相談の上で行い、口腔の乾燥症状のケアや、乾燥に伴う口のトラブルなどの治療を行います。
 また、歯周病になると唾液の分泌量が減り、口が渇くという現象が目立ちます。そして、口が渇くと、口の中が洗い流されないため不潔になりやすくなります。かかりつけの歯科医院で定期的な歯のクリーニングや歯周病の治療が大切です。

10月18日掲載 ボトルカリエス
飲み物触れる前歯の虫歯

 「ボトルカリエス」とは別名「哺乳(ほにゅう)瓶う蝕(しょく)」と言われ、ある程度の年齢を過ぎても哺乳瓶を使用していることにより前歯にできる虫歯を指します。しかし、ペットボトルの普及に伴い乳幼児以外でも「ボトルカリエス」が見られるようになっています。
 ジュースやスポーツ飲料などをペットボトルから直接飲んでいると、最初に飲み物が触れる前歯に虫歯ができやすくなります。外出先では直接飲むことも仕方ないかもしれませんが、家ではコップについで飲むようにした方が良いでしょう。
 昔、「らっぱ飲み」はあまり良い表現ではなかったと思いますが、現在ではペットボトルの「らっぱ飲み」は老若男女、場所も関係なく行われています。せめて小さいころはペットボトルのらっぱ飲みが習慣にならないようにしてあげることも大切ではないでしょうか。
 スポーツ飲料は発熱時やスポーツ時などには有効ですが、食事がきちんととれている時には過剰栄養となります。飲み物に含まれている糖類は、少しずつ体内に蓄積されていくと言われています。今年の夏は全国的に猛暑でスポーツ飲料の品薄もあったと聞きます。おいしく手軽に飲むことができる飲み物ですが、飲み方を少し考えるとそれに伴う虫歯を防ぐことができるのではないでしょうか。
 また、チューブに入った氷菓はとてもおいしいのですが、頻繁に食べていると上の歯の裏側に虫歯ができやすくなります。チューブをくわえ初めに甘いアイスがあたるのが歯の裏側なのです。
 ペットボトルのジュースにしても、チューブ入りの氷菓にしてもおいしいものですが食べ過ぎ、飲み過ぎは控えた方がいいでしょう。

10月4日掲載 入れ歯が痛い原因
歯ぐきとの不適合、かみ合わせ

 入れ歯が当たって困っていらっしゃる方は意外に多いかと思います。痛くなる原因は大きく分けて二つあります。
 一つ目は、歯ぐきの形と入れ歯の内面が合っていない場合です。合わない原因は、型取りの精度の問題、技工士さんが入れ歯を作る時の誤差で、どんなに丁寧に作業しても、大なり小なり必ず誤差が出ます。
 入れ歯を入れて、指でかみ合わせの部分を強く押して痛ければ、通常内面に適合試験材を塗り、圧接して不適合部分を見つけ削ります。何度かこの作業を繰り返すと内面の適合が良くなり、押して痛い部分がなくなります。
 二つ目は、上下の歯同士のかみ合わせが悪い場合です。静かに奥歯で「カチカチ」とかみ合わせた時に、左右均等にかみ合わず、どこか数点が最初に接触しその部分が強く沈み込んで痛くなります。前述の内面の適合がいくら良くても痛くなってしまうのです。
 この場合、最初に接触する部分をカーボン紙のようなもので印記し削合を繰り返し、左右均等にかみ合うようになれば痛みがなくなります。
 このように、@内面が均等に接触し、かつA上下のかみ合わせも左右均等になることが、痛くない入れ歯の基本になります。ただ、さほど問題なくとも患者さんが慣れるまで痛く感じることもあるため、自分で調整したりせずかかりつけ医に早めに相談しましょう。

9月20日掲載 全身の健康にかかわる唾液
虫歯防ぎ消化助ける働き

私たちが普段「つば」と呼んでいる唾液(だえき)は、どちらかというと汚いものや嫌なものというイメージでとらえられがちですが、“食べ物を飲み込むための水分”という以外にも全身の健康にかかわるさまざまな役割があります。
 まず第一に虫歯を防ぐ働きです。歯の表面のエナメル質は歯垢(しこう)と呼ばれる細菌のかたまりが作り出す酸によってわずかずつ溶け出して虫歯が始まるのですが、唾液は酸を中和して中性に戻すため、溶け出したエナメル質を再び表面に定着させるのです。唾液が少ないと、酸が中和されずに虫歯が進行して元に戻らなくなってしまうことになります。
 次に消化を助ける働きがあります。口の中で食べ物を細かくくだき、唾液とよく混ざり合った状態で飲み込むことで、食道や胃の粘膜をさまざまな食物が持っている刺激から守っているのです。逆によくかまずに飲み込んでいると胃腸に負担をかけることになります。
 そのほか唾液には、口の中の汚れを洗い流して口臭を予防する働きや発がん物質の働きを抑える力があることが分かっています。また最近では唾液中のホルモンの働きにより、全身のあらゆる細胞の新陳代謝を活発にすることが分かってきました。
 物をかめばかむほど唾液の量は増えるので、よくかんで食事することで唾液の持つ能力を生かすことができるのです。

8月30日掲載 歯の中の治療法
神経の痛み治す高度な技術

 歯の神経や根(根管)にかかわる治療を歯内療法といい、歯科治療の中でも高度な技術が必要とされています。
 歯内療法とは、歯の神経の痛みを治すための治療法で、主に根管の治療を指します。神経(歯髄)を取らずに残すことも、歯内療法の一つです。
 たとえば、虫歯が深い場合でも、覆髄(ふくずい)剤という神経の保護剤を用いて、できるだけ神経を保存し、歯を生かしたまま修復します。これを「歯髄保存療法」といいます。
 歯髄まで達した虫歯には、神経を取る「歯髄除去療法(抜髄)」を行います。抜髄した後は根管の細菌を取り除き、生体に安全な材料を詰めて、再びかめるように修復します。
 しかし、かぶせた物とのすき間から再び虫歯ができて細菌が入り込むなど、原因はさまざまですが、根管が再感染し、根の先に「根尖(こんせん)病変」ができることがあります。こうなったときには再度、根の中の治療を行う必要があり、これを「感染根管治療」といいます。
 また、子どもが転倒したときに見られる前歯の脱臼でも歯内療法が必要となります。脱臼とは歯が抜け出てしまうことです。抜けた歯を生着させるためには速やかに牛乳に浸して乾燥を防ぎ、できるだけ早く来院して下さい。
 歯の治療は治療前後の変化が目に見えない上、時間もかかりますが、建物でいえば土台に相当する非常に重要な役割を担っていることを、ぜひ認識しておいていただきたいと思います。
 また、治療後の自己管理は非常に重要です。清掃状態が悪ければ細菌が入って根尖病変の原因となりますので、定期健診は忘れずに受けて歯を長持ちさせましょう。

8月16日掲載 薬剤性顎骨壊死
骨粗しょう症の薬で副作用も

 顎骨壊死(がっこつえし)とは、あごの骨の細胞が死んでしまうことを言います。壊死を起こしても、通常、一部の骨の細胞が死ぬだけで、あご全体に及ぶことはほとんどなく、細菌による感染が起こらない限り、症状が出ることもありません。
 しかし、虫歯や歯槽膿漏(のうろう)からの感染によって骨髄炎という状態になると、さまざまな症状を呈し、その範囲によっては重症化することもあります。
 最近、この顎骨壊死が骨粗しょう症の治療に用いられるビスホスホネート製剤といわれる薬剤の副作用で起こり、容易に骨髄炎に移行しやすいことが分かってきました。この薬剤は、骨粗しょう症の特効薬的な存在で、明らかにほかの薬剤より効果があるとされ、骨粗しょう症に伴うさまざまな継発症を予防することが知られています。
 これらの継発症を抑えることは、寝たきりになる率を減らし、寿命の延長にも寄与しているといわれています。したがって、副作用があるからといって飲むのをやめるのではなく、予防に気を付けることが重要となります。
 現段階での最も確実な予防法は、口の中の衛生管理をすることで、虫歯や歯槽膿漏がある場合は治療をし、その後も定期的に専門的な口腔(こうくう)清掃を行うことで、明らかな予防効果が出るとされています。これらの薬剤を飲んでいる方は、まずはお近くの歯科医院で相談してみてください。

7月26日掲載 洗口剤の役割
環境整えた後の補助

洗口剤、洗口液など数多くがドラッグストアの店頭に並んでいます。各社の“売り”がそれぞれあり、何を選べばよいのか歯科医師、衛生士でも迷うほどです。
 昔は外出先から戻ると「塩水でうがいをしなさい」と言われたものです。洗口剤の種類が増え出したのは歯周病の知名度が上がったのと同じ時期くらいからでした。各社むし歯を防ぐ、歯周病を防ぐ、口臭を防ぐ、着色を防ぐなどさまざまな効果を掲げています。
 洗口(うがい)をすることは口の中の風通しを良くするためには大切です。現に、うがいや歯磨きをきちんと行うことで最近ではインフルエンザ予防になることが証明されています。
 近年では歯周病が治るといわれる洗口剤も登場していますが果たして万人に効果が100%あるか? といえば疑問が残るところです。できてしまったむし歯や、ついてしまった歯石は洗口剤ではどうしようもありません。
 洗口剤に似たものでフッ素やキシリトールも期待が持たれるものです。しかし、これらを摂取したから虫歯にならないとは言い切れないと思います。
 ダイエットも、テレビで見るように楽してやせられるものはなかなかお目にかかれません。洗口剤も口の中の環境を整えた後、予防するための補助的なものと考えてみるのはいかがでしょうか?

7月19日掲載 歯ぎしり・くいしばり
無意識、障害を誘発

 むし歯が多いわけでもなく、かみ合わせも特に悪くないのになぜか詰め物がすぐ取れたり、治療した歯が折れたり、あごが痛んだりしませんか。これはもしかして歯ぎしり、くいしばりを習慣的にしているのかもしれません。
 歯ぎしり、くいしばりは無意識に行われているため、ほとんどの人が自分がしているという自覚がありません。現代のストレス社会の中、頻度や程度の差はありますが、誰でもしている一種のくせと考えてよいと思います。
 しかし、これにより歯に加わる「過剰な力」が時には次のような問題を起こします。
 1.歯への障害=歯の磨耗や歯の破折、歯がしみる・かむと痛い等
 2.歯周組織への障害=歯肉炎、歯周病(歯槽のうろう)
 3.顎(がく)関節への障害=顎関節痛、開口障害(カクカク音)
 4.全身への障害=顔面痛、頭痛、肩こり、腕のしびれ、腰痛、倦怠(けんたい)感
 これらの症状のすべてが歯ぎしり、くいしばりからくるわけではありませんが、無用な悪いくせはなくしておく方が良いと思います。
 特にくいしばりは、見えない上に音もしないので、なかなか自分では気付きません。しかし、強い力を受けている歯やその周囲の組織に力の痕跡が認められることが多いのです。まずは自分の無意識のくせに気付いて力のコントロールをはじめることです。日中のくいしばりなら、気付きさえすれば減らすことができます。
 あなたの口に歯ぎしり、くいしばりの足跡が残されているかは歯科医院での健診により分かります。

6月28日掲載  食べたものを飲み込む時にうまく飲み込めず、慌てて水やお茶を飲んだりした経験はありませんか。
 パサついた食べ物を飲み込もうとして、のどにつかえ、むせてせき込んだりすることもあります。
 「誤嚥(ごえん)」とは、食べ物が気管に入ってしまうことで、食べたり飲み込む力が弱くなったりした方が食事中に起こすことが多いのですが、健康な方にも見られます。一度に多量の「誤嚥」が生じると、気管をふさいでしまって、呼吸ができなくなり、「窒息」を引き起こしてしまいます。
 食事中の誤嚥や、寝ている間に口の中の唾液(だえき)などがいつのまにか気管に入ってしまっても、量が少なく健康であれば、せきをしたりして問題ありません。しかし、障害があったり、抵抗力が落ちてきたりすると、知らないうちに誤嚥が原因で、肺炎を起こしたりします。
 肺炎は日本人の死因の第4位を占め、全体に増加傾向にありますが、肺炎で死亡する人の9割は65歳以上の高齢者と言われています。
 食事の介護の時にも、誤嚥を防ぎ、おいしく安全に食べるためには、誤嚥を起こしにくい姿勢や食事の形態、一口ずつ食べる時の量、しっかり飲み込んでから次の一口を食べるようにするなど、注意が必要です。
 食事の後や寝る前には、お口の中を清掃し、衛生状態を良くして、誤嚥による肺炎の予防を心がけたいものです。

6月14日掲載  健康の維持には予防が重要であることは言うまでもありません。それには、食事や運動、睡眠など日ごろの生活に気を付け、定期健診により病気を早期に発見することが必要です。
 歯科の定期健診は、主に虫歯と歯周病を生涯にわたり予防することを目的としています。
 ・幼児や小学生では、虫歯の予防
 ・中学生から二十歳代では、虫歯と歯周炎の予防
 ・三十歳代以上では、虫歯と歯周病の予防
−を重点的に行います。
 虫歯や歯周病の原因は、お口の中にいる細菌による感染症です。数百種類ともいわれるこれらの細菌の固まり(バイオフィルム)は、歯面や歯周ポケット内に強固に付着するため、歯磨きだけでは、なかなか落とすことができません。そのため、専門家によるお口の健康の維持、管理(メンテナンス)が必要となってきます。
 メンテナンスでは、
 ・虫歯の有無、歯肉の状態、歯並びやかみ合わせ、清掃状態をチェックし  、
 ・フッ化物の塗布
 ・歯石の除去(スケーリング)
 ・専門家による機械を使った歯のクリーニング(pMTC)
 ・口腔衛生指導
−など、その方のお口の中の状態や年齢に合った方法で行います。特に、治療後のメンテナンスは欠かせません。
 生涯にわたって自分の歯でおいしく食事ができることは、健康の第一歩です。ぜひ、三ヶ月に一度は、かかりつけ歯科医での定期健診(メンテナンス)をお勧めします。

5月31日掲載  新しい年度が始まり、この時期いろいろな所で歯科健診が行われていると思います。年に一度は、口の中をチェックして、早期予防、早期治療へ役立ててください。
 さて、自分では毎日きちんと歯磨きしていたはずなのに、「汚れ(歯垢=しこう)が残っていますよ」とか、「虫歯(う蝕)になっていますよ」などと言われたことはありませんか。それはきっと歯を磨くという言葉に惑わされているからだと思います。大事なことは、磨くことではなくて、口の中の汚れを落とすこと、つまり掃除なのです。ですからどこに汚れがたまるか考えて行うことが大切です。
 口の中は歯並びのきれいな人でもかなり複雑です。ましてや歯並びに自信のない人や、歯数の減った人、義歯の入っている人、歯周病が進行している人、う蝕が進行している人は、かなり複雑です。
 かかりつけの歯科医院にて、自分の汚れが残っている所や、たまりやすい場所を教えてもらうのがいいでしょう。そして、どのように磨いたらいいかも教えてもらってください。
 ふつう汚れがたまる所は、奥歯の物をかむ面、歯と歯のすき間、歯と歯ぐきの境目、一番奥にある歯の奥の面です。歯を一本ずつ、歯と歯ぐきの境目一カ所ずつを、細かく丁寧に磨いてください。きっときれいになります。
 毎年6月4日から10日までは歯の衛生週間です。この期間、歯科医師会などが主催して、さまざまなイベントが行われますので、ぜひ参加してみてください。新しい発見があるかもしれませんよ。

5月17日掲載  よく患者さんから、「右の奥歯がないから左でばかりかんでいた」という悩みを聞きます。通常われわれが食事するときは、右側あるいは左側の一方で数回かみ、食べ物が舌の上を移動しその反対側でかみ、左右交互にかむ側を交換しながらものを食べます。
 もし、片側の歯が何らかの原因でなくなってしまった場合、左右両側でバランスよく食べることができなくなります。かめる側だけでかむ“片咀嚼”(へんそしゃく)という状態になってきます。そうなると口の中ではどのようなことが起こるのでしょうか。
 片側の歯ばかりでかんでいると、かみ砕いた食物は舌の上にうまく運ばれず、ほお側の空間に食べ物がたまりやすくなります。つまり食べたものがなかなか飲み込めずいつまでも残ってしまい、口の中は不潔な状態となります。
 その結果、かめる側でも虫歯や歯周病が進行しやすくなり、また高齢者においては、このような状態が続くと、誤嚥性肺炎を引き起こす危険性の高まることが知られています。かみ合わせのズレによる頭痛や肩こりなども知られています。
 片咀嚼を予防するには、当然のことながら両側の歯でかめるよう口の中の治療を受けることが大事です。片側の奥歯が抜けている場合などは、そこに義歯などを入れ左右両側でかめるような状態にするようにします。
 義歯を入れることや歯にかぶせものをすることを補綴(ほてつ)といいますが、補綴方法は口の状態によりさまざまです。それらはかかりつけの歯科医と相談して片咀嚼がないよう治療を受け、お口のケアに気を付けて健康な状態に保つことが大切であるといえます。

5月3日掲載  子どもが歩き始めたばかりの1歳から3歳のころは、転倒や転落などの事故が起こりやすく、歯や口の周囲をぶつけて歯科に来院することが多い時期です。口の中を切る、歯が折れる、取れる−といったけがを予防するために、転倒や転落を防ぐことが大切です。子どもと一緒にいるときは、常に転ぶだろう、落ちるだろうと思って先まわりをして対処しましょう。
 段差や凸凹があるところを歩かせる場合には、転びそうになったら支えられるところにいて見守る。大人用のいすに登ったり下りたりするときや座らせるときにも、すぐ手を出して支えられる位置にいる。室内では子どもが歩く先にあるつまずきそうな物を片付けておく。
 階段は手をつないで一緒に昇り降りするか、階段の下側で見守り、転落しそうになっても手を出せるようにする。そして転んだ場合でも小さなけがですむように、荷物は背負わせて子どもの両手は自由にさせる。もちろん歯ブラシやくし、ようじに刺した食べ物を口にくわえて歩かせないことも重要です。
 もし口の周囲をぶつけてしまったら、ほかのけがを確認、緊急度を考え、先に連れて行くのは医科か歯科かを決めます。頭も強くぶつけている場合には当然医科が優先です。意識消失の有無(すぐ泣いたかどうか?)が判断の目安です。見ただけでは大丈夫なようでも、レントゲン写真で見ると歯が折れていたり、しばらくして歯が変色したりすることもあります。歯科は早めに必ず受診してください。

4月19日掲載  歯周病の原因は歯垢に潜む歯周病原菌なのは言うまでもありませんが、近年ストレスや喫煙、食生活などの生活習慣とも密接にかかわりあっていることが分かってきました。特に、喫煙は歯周病や全身疾患の最大のリスク因子です。
 喫煙の習慣があると、歯周病が発症・進行する危険度が2〜8倍高くなり歯周病原菌の数が2倍以上になることが報告されています。
たばこの煙には約四千種類の化学物質が含まれており、そのうちの約二百種類が有害物質でニコチン、タール、一酸化炭素が三大有害物質といわれています。
 歯にタールが沈着すると、歯の表面がザラザラして歯にプラークがつきやすくなります。特に歯と歯の間にタールがこびりついてしまうと歯ブラシでは取れなくなってしまいます。
 また、たばこを吸っていると毛細血管の血流が悪くなり、出血が起こりにくかったり歯肉が発赤しなかったりすることがあり、歯周病にかかっていることを自覚しにくい状態となっています。
たばこは体の抵抗力を弱めるだけでなく細菌の毒性を高め、体を守る働きや自己修復する働きを狂わせてしまい、歯周組織の細胞の傷を治す働きが悪くなります。
 そのため、喫煙者は歯周病の治療をしても喫煙習慣が残っているままだと改善効果は非喫煙者の約半分しかありません。
心身ともに健康に過ごすためや歯周病を防ぐためにも禁煙することをお勧めします。

3月29日掲載  医療施設にはさまざまな機能があり、その機能によってさまざまに分かれています。
通常時に受診するのは診療所。診療所では難しく、入院を要する場合などは病院。難治性の病気など、治療難度の高い疾患などは大学病院。以上のように、疾患の種類や程度によってそれぞれの施設で機能が分担されています。
 歯科においても、その機能分担は成されているのですが、医科と異なり診療科が少ないこと、特殊な領域が少ないことなどから、それらがあまり知られていません。
 歯科疾患のほとんどを占めるむし歯や歯槽膿漏(のうろう)は、診療所で治療されます。比較的特殊な治療である歯列矯正やインプラントなども診療所で行われることが多くなっています。
 それらに対し、比較的疾患数の少ない歯や歯茎以外の口腔疾患(口腔がん、骨折など)は口腔外科で治療されますが、福島県内には数ヵ所しかありません。
 その一方で、高齢化社会における基礎疾患は歯科治療上の大きな問題であり、十分な配慮が必要です。
 場合によっては、病院歯科などで、全身状態の変化に対応すべき準備を整え、必要であれば、入院管理下での処置も考慮しなければなりません。
 このように歯科領域においては診療所、病院歯科、病院歯科口腔外科と機能分担されています。

3月15日掲載  通常の保険治療の中では、詰め物というと金属のほかレジンが多く用いられています。レジンという材料は、いくつかのメーカーから数種類の材料が次々と開発されてきており、新しく詰めたところはむかし詰めた材料に比べ色が良くなったと感じられる方も結構いらっしゃるのではないでしょうか。
 しかし、基本的にはシェードガイドというものがあり、色は数種類に定められていて、その中で一番近い色のものを採用して詰めることになります。患者さんの歯は十人十色です。何十種類の色が用意されているわけではないので難しいところでもあります。
 さらに虫歯を削った後の穴の深さ・広さによってや神経に近い場合などはそれを保護する下地の材料を使いますが、その色や厚みが詰め物に微妙に変化を与えてしまいます。それに加え材料によっては処理材が必要となり、その厚みも影響してきます。従って現在のその歯の状況にあわせた詰め方で修復されます。それでも歯周疾患などにより歯肉が出血しやすいと詰め物が固まらないうちに血液の成分や浸出液が材料に侵入し色調に支障が出ることもあるなど、詰めた後の結果にバラツキが生じる原因も多々あります。
 材料は各種改良が重ねられ、一定の時期がたつと現在よりもより自分の歯の色に近いものが出てくるようになるかもしれません。いずれにしても詰めた後の二次的なうしょくになれば変色は避けられませんので、充填(じゅうてん)後も十分なブラッシングは引き続き心掛けてください。

3月1日掲載  皆さんの今使っている入れ歯、異常はありませんか?今まで何ともなかったのに、急に歯ぐきに当たるようになってきたり、外れやすくなったり、かみ切りにくくなったりしていませんか?毎日、何げなく使っている入れ歯ですが、かなり過酷な環境で使われています。
 最近は、あまり食べ物をかまなくなったとはいえ、一日に何百回と食べ物をかみ砕き、力仕事をする時などは、強い力でくいしばられ、冷たい物、熱い物など温度差の大きい物が次々と口の中に入ってくる上に、湿度は100%。このような状況で入れ歯は毎日使われ続けています。しかも入れ歯は口の中で邪魔にならないように、その形が制限され、厚みも十分にはとれません。これでは使っていて、壊れてくるのも当たり前ですよね。
 入れ歯が乗っている歯ぐきも少しずつ変化しますので、入れ歯との間にすき間が生じ、入れ歯が外れやすくなったり、割れたりする原因になります。部分入れ歯の場合、このがたつきが鉤歯(こうし=針金のかかっている歯)に伝わり、金属冠が外れたり、歯周病が進んだりします。毎日使っている物なので、なかなかその変化に気付きにくく、異常を感じた時には、かなり症状が進んでいるということもあります。
 特に異常を感じなくても、年に一度ぐらいは、歯科医院に足を運び、入れ歯の定期点検を行ない、必要に応じて入れ歯を補修したり、歯の清掃をすることで、お口の中の健康を維持しましょう。

2月15日掲載  歯周病は歯の周りの骨と歯肉が感染する病気です。歯肉だけの病気は歯肉炎、骨まで感染した場合に歯周炎といわれます。20歳を超えたら、もう80%近くの方が感染しています。
 歯周病の治療というのは基本的には歯の周りの掃除なのですが、付いた汚れの場所や量により掃除の規模や治療期間が変わってきます。しかし、歯がグラグラ揺れ始めてからでは、かなり予後が悪くなります。
 歯周病の治療は、虫歯のように痛みが消える、穴が埋まるといった明らかな実感がなく、歯ブラシで歯を磨くという毎日の地道な作業を続けなければならず、歯周病に効果のあるという薬品も単独で使用しては効果が期待できません。歯ブラシなどの機械的な掃除で、歯の周りの細菌の汚れを取って初めて効果が期待できるのです。
 歯周病の検査は歯の周囲の溝(ポケット)の深さを測り状態を診断します。ポケットは浅いほうが良く、1〜2ミリが通常の深さで3ミリ以上になるとそれだけ汚れがたまる溝が大きくなったと考えてください。
 深い溝はちょうど生ごみがたまるポケットのような状態です。厳密には細菌が繁殖しているのですが、栄養はご飯などのデンプンからできる糖分ですから、生ごみが腐るのと同じわけです。
 重度の歯周病になると、歯肉が腫れて膿(うみ)が出たり歯がグラグラしてきます。腫れが治まって痛みが消えたのは決して治ったわけではなく、膿が出たので歯肉の下に膿がたまらなくなっただけです。口のにおいの原因にもなりますし、骨の中が感染し、心臓にも細菌が飛び、命を落とす人もいます。歯が原因の心臓疾患で抜歯を依頼されることもあります。いずれにしても、歯周病は予期的なお口の清掃と予防に限るといえましょう。

1月25日掲載  永久歯の本数は第三大臼歯(親知らず)を除くと28本となりますが、生まれつき歯が足りない人がいます。この足りない歯のことを先天性欠如歯(先欠歯)といいます。発現頻度は調査対象の違いによりばらつきがありますが、10%近いという報告もあります。一人当たりの先欠歯の本数は1歯から多数歯までさまざまです。
 先欠歯の原因は系統的な退化現象と考えられており、感染、薬剤、栄養障害などの環境的要因や遺伝的要因などが挙げられます。発現部位は、下顎(かがく)第二小臼歯が最も多く、下顎前歯、上顎(じょうがく)側切歯、上顎第二小臼歯にもよく見られます。先欠歯を伴う歯列では、かみ合わせのバランスが崩れる可能性があり、特に多数歯が欠損している場合は成長期からの対応が大切です。
 具体的な対処法は先欠歯の部位や数によってさまざまですが、たとえば第二小臼歯が先欠で先行歯である乳歯が存在して、それ以外のかみ合わせに問題がない場合はできるだけ成長期は乳歯を保存し、乳歯が脱落した時点でその部位にインプラントやブリッジという補綴(ほてい)処置を行って解決を図る方法があります。
 また、先欠歯以外にかみ合わせにも問題がある場合は矯正治療によって先欠部位の空隙を閉鎖して歯列のバランスを整える方法があります。

1月11日掲載  歯の治療後に仮歯を仮づけしてもらったことがある人は多いと思います。仮歯の役目はたくさんあります。見た目を良くする。食べやすくする。話しやすくする。これらは、比較的わかりやすいですね。このほかにも、削った面を汚れから守る。歯の移動防止(両隣の歯や、相対する歯、その歯自体)。削った面に歯肉が覆いかぶさってくるのを防ぐ。以上のように重要な役割を果たしています。
 仮歯を入れなかった場合の歯の移動量、歯肉がかぶさってくる量は、1ミリ以下から大きくても数ミリのことが多く一見微量のようですが、良質の治療を行う上では、無視できないものです。歯が移動してしまうと最終的なかぶせものが、きつくて正しい位置に入りにくくなり、入ったとしてもかなり高くなり調整に時間がかかります。
 仮歯を作るための多少の治療時間の増加を許容いただけるのであれば、メリットの多い仮歯の装着を、前歯に限らず、奥歯に関してもお勧めいたします。
 しかしながら仮歯にも外れやすいという欠点があります。短期間のうちに外すようになるため、強すぎず、弱すぎず、微妙なさじ加減で着けてあるのです。万が一外れてしまったら、歯の移動防止のために、可能ならその日のうちに仮づけしてもらいましょう。

12月21日掲載  歯科に来院する時に注意してほしいことをお話しします。
 インフルエンザは人の咳(せき)、くしゃみ、つばなどとともに放出されたウイルスを、のどや鼻から吸い込むことによって感染します。まずはマスクの着用、手洗い、うがいの徹底、栄養・体調管理、そして咳エチケットなどの一般的な注意事項を守りましょう。
 咳エチケットとは、咳やくしゃみをする際にティッシュなどで口と鼻を押さえ、顔をそむけて他人から1〜2m離れ、分泌物を含んだティッシュをすぐにふた付きの廃棄箱に捨て、咳をしている人はマスクを着用することです。
 寝不足時、疲労時そして体調が悪い時は、病気に抵抗する身体の力(免疫力)が低下し感染のリスクが増しているので来院は控えましょう。学校が臨時休業でも、発症していない子どもは歯科に来院しているようです。来院前に体温を測って、発熱していないことを確認してください。
 虫歯や歯周病が原因で化膿(かのう)性の炎症が起きている場合には発熱し、時にはインフルエンザのように高熱になります。発熱の原因が歯科の病気由来のものか不明の場合には、医科を受診しインフルエンザではないと診断してもらってから歯科に来院してください。
 インフルエンザの流行に対し歯科では、消毒の徹底、患者用の消毒薬の設置、予約時間を工夫し待合室を混雑させないなど対策しています。心配なことがあればかかりつけの歯科に相談してください。

11月30日掲載  歯科医院はほかの医院と比べ、受診するのに勇気がいると聞きます。そのため痛みが出たり、機能的、見た目に支障をきたさないと受診しない方も多いようです。
 例えば、奥歯が失われるとほおがこけたり、かむための顔の筋肉が使われなくなるのでほおがたるんだり、口角が下がったり、ひいては目尻も下がることで年齢よりも老けて見えてしまうことがあります。高価な化粧品も効果があるかもしれませんが、一度口の中の環境を整えることも大切だと思います。
 1、2本歯が失われても食べることができるからと放置していると、失われた歯のスペースを埋めようと周りの歯が寄ってしまい、いざ治そうという時に予想よりも大掛かりな治療が必要になってしまいます。勇気は必要かと思いますが、費用も期間も最小限で済ませるには早めの受診をお勧めします。
 また、鼻呼吸ではなく口呼吸をしていると口の周りの口輪筋がゆるみ、上の前歯が前に出てくることがあります。下唇をかむ癖がある場合は上の歯が、上唇をかむ癖の場合は下の歯が前に出てくることがあります。
 幼児がいつまでも「おしゃぶり」を使用していると、奥歯はかみ合わさっていても前歯がかみ合わない「開咬(かいこう)」となることがあります。奥歯のかみ合わせができ始めるころには「おしゃぶり」からの卒業をお勧めします。

11月16日掲載  歯科治療というものは、治療の性質上1回で終了することがまれで、一般的に数回の通院が必要になってしまいます。さらに、最近では仕事上や経済的な理由などいろいろと制約があり来院できなくなってしまう傾向が見られるようです。
 しかし、一般歯科治療の中で絶対に長期間放置しないでいただきたくないのが歯の神経(歯髄)をとった後や根の治療の途中の場合です。
 通常、根の治療というものは歯の根の中(根管)の自他覚症状が取れて初めて最終的な根管の詰め物を行い(根充)、その間は根管内の洗浄・消毒や治療薬の交換(根治)を進めていきます。そしてその際ふたをする材料には比較的簡単に除去ができるものを用います(仮封)。
 そのため長期間中断すると問題となるのが、仮封材は長期間もたないことと、根に入れた治療薬が変質し周囲の組織に悪い刺激をあたえ、症状を悪化させ、時には顎骨(がくこつ)に炎症が波及するといった点が気になるところです。また歯自体の修復も終わっていないことから歯の破折も心配されます。
 したがって、事情によりしばらく中断しそうである場合などは、必ず主治医と相談してください。仮に根を詰める薬(仮根充材)などの応用や、ある程度強度のある仮封を行うことにより、一時的に症状を安静に保たせておくことができます。それでも長期の放置は禁物です。
 もう一点は、入れ歯やブリッジの型を取った後です。歯の型を取った時点での模型を基に製作するようになりますから、歯が移動してしまうと初めからやり直しになってしまいます(歯を削ったり型を取り直したり)。この場合はその治療に入る前に申し出るようにしてください。
 せっかく治療を始めたのに、かえって悪くさせるようなことは避けましょう。

11月2日掲載  動物の歯は、それぞれの食べ物に適した形に進化しています。例えば、草食動物は草をかみやすいような形に切歯と大臼歯が発達しており、肉食動物は肉をかみ、食いちぎりやすいような形に犬歯が発達し臼歯も鋭くなっています。
 人間の場合はどうでしょう。人の歯は、野菜や肉などいろいろな食物を効率よくかめるように発達したほか、発音を助ける働きも持っています。その形は切歯、犬歯、臼歯に大きく分けられ、それぞれに役割があります。
 切歯は、平たく先端が鋭く食べ物をかみ切りやすい形。犬歯は、その名の通り、先のとがった円すい形で、食べ物を食いちぎりやすい形。臼歯は、かむ面がでこぼこした臼状で食べ物をすりつぶしやすい形をしています。(特に六歳臼歯は、かみ合わせの要になっています。)
 これらすべてが機能することにより、いろいろなものを食べることが可能となります。また、よくかむことは、脳に刺激を与え記憶力や集中力を高め老化の防止に効果があります。満腹中枢を刺激し肥満の予防にもつながります。
 もし、虫歯や歯周病などで歯が失われると、これらの機能も失われ、消化器官や発音など全身的な影響がでてきます。
 永久歯は、合計で32本(親知らずを含める)ありますが、歯を1本失うことは、32分の1本減ることではなく、かむ機能の一つを失うことなのです。よくかめることは、健康の第一歩です。日ごろからのお手入れはもちろんのこと、定期的な健診もお勧めします。

10月19日掲載  虫歯ができるメカニズムは「歯」「唾液(だえき)」「食べ物」「時間」が関係しているといわれています。通常、口の中にある食べかすを取り除くには、歯ブラシを使う方法がありますが唾液も重要です。自浄作用といって、唾液によりある程度の食べかすは流れていきます。唾液はpH7(中性)で食べ物を食べると酸性に傾き、pH5.4になると歯の表面が溶け出すといわれています。そして、時間と共に再び中性に戻り、口の中の環境を整えようとしています。
 また、常にアメなどを含む食べ物が口の中にあるといつまでも酸性で虫歯になりやすいので、口の中を空っぽにして早く中性に戻すようにすることが大切です。
 唾液の分泌量や質により虫歯になりやすい場合もあります。鼻疾患があり口呼吸の場合は、口が常に開いていて口の中、特に前歯が乾きやすく虫歯の原因菌が繁殖しやすくなります。また、高齢者の方も唾液の分泌量が減少するといわれています。医院によっては唾液の分泌量を測定することができるので、相談してもよいと思います。

10月5日掲載  8020運動とは、80歳まで20本以上の歯を残そうという趣旨の運動をいいます。
 ある調査では、20本以上の歯が残っている人たちの90%以上が、どんな食べ物でも欲しいものは食べられると答えています。しかし、20本未満の人たちでは、半数以上の人が欲しいものが食べられないと答えています。
 また、8020達成者は寝たきり者が少なく認知症者も少ないということも知られています。この運動の究極の目的は、健康寿命を延ばし、穏やかで、ゆとりのある文化的な老後生活の構築にあります。
 さて、8020を達成した方はどのような生活をしているのでしょうか。県内では達成者に対してアンケートを行いました。
 その結果として分かったことは「朝食は欠かさず、3度の食事を規則正しくかつ十分に取る」「運動を毎日または定期的に行っている」「太りすぎや、やせすぎなど体型に注意している」「間食はあまりとらない」「歯磨きは1日2回以上行っている」「睡眠を十分にとっている」「喫煙せず、飲酒量も少ない」「不快な事が少ない半面、楽しいことが多い」という結果が出ました。
 皆さんの生活習慣と比べいかがでしょうか?8020を目標に自分の生活習慣を見直してみませんか。

9月21日掲載  口の周囲や歯をぶつけて起こる歯の外傷は、乳歯の時期では1歳から3歳ぐらいが多いといわれています。このころは歩き始めたばかりで、歩行が安定せず、転びやすいためです。最近の家の中はフローリングが多くなり、屋外は地面がコンクリートやアスファルトで舗装されていて、お子さんが軽く転んだだけでも、前歯を強くぶつけることが多い状況にあります。
 歯をぶつけると、口唇・歯肉が歯で傷ついて出血したり、歯が欠けたり折れたり、歯の位置が変わったり、動くようになったり、取れてしまったり、歯の周りの骨が折れたりといったことが起こります。
 ぶつけても乳歯だから次の永久歯が萌(も)えてくるので安心と考える人がいますが、乳歯の下には永久歯の卵(歯胚)があります。ぶつけた力の加わり方によっては、次に萌える永久歯の歯の表面が形成不全を起こして白濁したり、色が付いたり、凸凹になったりすることがあります。
 また次に萌える永久歯が出てくるのが遅くなったり、萌えてくる場所がずれたり、萌えてこない、などの影響が出ることがあります。そのため乳歯をぶつけた場合には、次の永久歯がちゃんと萌えてくるまで経過を見ていかないと安心できないのです。
 歯をぶつけたら、早期の歯科の受診ができたか否かで、受傷したその歯の予後が決まることがありますから、歯をぶつけたときは早めの歯科への受診が大切です。

9月7日掲載  歯周病の病原細菌は、もともとは人間の口の中には存在しなかったものの、何らかの機序で口の中に常在するようになると考えられています。
いったん口の中に常在するようになると、その菌数を減らすことはできても完全に除去することは極めて困難であるため、全身的あるいは口の中の状況によっては除去しても再び増殖して人体に害を与える場合があります。つまり歯周病は再発しやすい病気であるといえるのです。
 歯周病に対してさまざまな治療を行って病状が安定した際には、その状態を長期間維持するためにSpT(サポーティブ・ペリオドンタル・セラピー)と呼ばれる歯周病の管理を継続的に行うことが重要になります。
 SpTとは歯科医師や歯科衛生士による各種の検査、歯垢(しこう)や歯石の除去、歯面の清掃、かみ合わせの調整などの定期的な治療のことで、患者さんの病状によって間隔は変わりますが、数週間から数ヵ月ごとにSpTを実施しながら歯周病の管理を継続することで病態の安定を維持していきます。その際には、口の中の状況だけでなく全身状況も把握しながら、局所的な歯磨き指導や食生活指導を行い、生活習慣の改善を図りながら歯周病を管理していきます。そして、SpTの継続後、歯周組織の健康の回復が確認できたときには歯周病は治癒したものとなり、SpTは終了します。
 ただし、その後も再発防止のためには管理が必要で、患者自身のセルフケアと歯科医師など専門家による定期的な健診を継続することが重要になります。

8月24日掲載  最近は歯を白くしたいという患者さんが増えています。白くする方法は大きく分けて二つあります。特殊な漂白剤を使う方法と、歯自体を削って人工物で覆う方法です。
 漂白剤を使う方法はさらに二つの方法に分けられます。「ホームブリーチング」は、自宅でマウスガードのような装置に漂白剤を入れ、2週間ぐらいかけて行います。「オフィスブリーチング」は歯科医院にて、1、2時間で漂白する方法です。どちらの方法も、少しずつ色が後戻りするので、白さを保ちたい場合は、ときどき再漂白する必要があります。
 これに対して、歯を削り、白い材料で覆う方法は材質や覆う範囲などにより多種多様です。セラミックやプラスチックの単体、またはこれらを混ぜた材料、歯の周りを360度かぶせるもの、コンタクトレンズのように歯の表面だけ覆うタイプなどがあります。
 これらの方法は、大なり小なり歯を削るリスクが伴います。耐久性などの点からは、削らない天然の歯に勝るものはありません。見た目のコンプレックスは人によりさまざまです。コンプレックスが強いほど、歯の美白は素晴らしい効果を発揮します。コンプレックスの度合いと、削るリスクを十分検討し、主治医とよく相談して最善の方法を見つけましょう。
 また、定期的な歯のクリーニングも白さを保ち全身の健康を維持する一つの手段です。

8月3日掲載  飲み物によるむし歯のリスクを考えると、飲み物に含まれる砂糖の量と酸の度合いが問題になります。
 まず、飲み物に含まれる砂糖の量ですが、ゼロや控えめ表示のものを除いた清涼飲料、炭酸飲料には350mlの缶で約35g程度、通常サイズのスティックシュガーで約6本分の砂糖が含まれています。スポーツドリンクはその半分程度です。成人の砂糖摂取量の目安は1日50gで、半分が食事の調味料などでとる量、もう半分が嗜好(しこう)品でとる量です。
 次に飲み物の酸の度合いですが、多くの飲み物は歯を溶かすのには十分な酸っぱさです。歯の表面のエナメル質が溶ける酸の度合いは水素イオン指数(pH)5.5ですが、清涼飲料や炭酸飲料は、それよりも強い酸度を示すpH5.0以下です。果実のジュースも同じくらいの酸の度合いです。お茶、コーヒー、牛乳の酸の度合いは、歯を溶かさない中性に近い6.0〜7.0のpH値です。
 虫歯予防にはこれらを考えて飲み物をとることが大切です。砂糖の量を把握し、一緒にお菓子を食べる場合は、組み合わせを考えて砂糖の量を減らしましょう。時間をかけてだらだら飲むと、口の中にずっと飲み物が残るので虫歯のリスクが高まります。寝ながら飲むと、唾液が洗い流しにくい上の前歯の唇側から奥歯のほお側の部分に停留しやすく、この部分が虫歯になりやすくなります。
 虫歯のリスクには個人差がありますので、食生活については、かかりつけの歯科医に相談し、それぞれに合った適切な指導を受けてください。

7月20日掲載  「かぶせていた銀歯が取れてしまったので、くっ付けてください」と言って来院される患者さんは、多くいらっしゃいます。
 外れてしまう原因は、銀歯の周囲から虫歯が進行していたり、常につまようじなどを使って、歯の間にはさまった食べかすを取っていたり、かみ合わせの変化によって一部の歯に強い力が加わるようになっていたり、不意に大きな力が加わった場合などさまざまです。
 大半の人は、外れるとすぐに歯科医院に来院されたり、予約の電話をしたりしますが、中には長期間放置したり、三個四個と外れてから来院したりする人も見られます。
 通常、外れた部分に虫歯がなく、適合に問題がなければ、もう一度付け直すこともできますが、長期間経過した場合、見た目以上に内部で虫歯が進行していることが多く、抜歯になってしまうこともあります。外れてしまったら、できるだけ早く歯科を受診してください。
 また、前歯の差し歯が外れてしまった場合などに多いのですが、とりあえず自分で差し歯を元に戻したり、瞬間接着剤などでくっ付けて来院される患者さんもいらっしゃいますが、これは危険なのでやめてください。気持ちは分かりますが、ちゃんと元に戻っていないのに、無理に押し込んだり、歯の中にセメントのかけらや食べかすなどが入っていて、浮き上がった状態で差し歯を付けてしまうと、かみ合わせた時に歯根にヒビが入ったり割れてしまったりして、抜歯になることもあります。

7月6日掲載  「舌が痛い!舌がんではないか?」との心配で受診される方がいます。
 歯科では、まず舌の痛む場所の周囲に虫歯の鋭い縁や詰め物、かぶせ物、入れ歯、不正な歯並びなどの出っ張りがないかを診査します。該当するのがあれば、削ってツルツルに磨き、舌への刺激を除外します。口内炎にはステロイド剤などを塗布し、患者さんには2週間ほど、刺激性の食物を控えて、口の中を清潔に保ってもらいます。
 これで治れば簡単なのですが、中高年齢者にはもっと複雑な原因が絡んできます。高血圧や不眠症の薬・抗不安薬などを服用していると、その副作用で唾液(だえき)の出が悪くなり、口が乾き、舌がこすれて痛みが発生します。副作用を考慮した薬の再検討は内科の主治医に相談しましょう。加齢に伴う体の変化に合わせて、食生活習慣の改善や唾液分泌を促すための予防法などは歯科医院でも相談に応じます。
ほかには、口の粘膜や舌に白いこけ状のものが出たり、赤くただれたりして痛む「カンジダ菌」という真菌(かび)の感染が原因のときもあります。よく似た症状でも「白板症」や「扁平苔癬(えんぺいたいせん)」という粘膜の病気が原因の場合もあります。
 これらの病気の判別は、治療法が全く逆のこともあるので、見極めが大切ですから一つの方法で治療していて2週間から1ヵ月たっても病状が軽減しない場合や、しこりを感じるような時は、できるだけ早く専門の口腔(こうくう)外科や咽喉(いんこう)科で精密検査を受けてください。
 舌にも口の中にも異常がなくても痛む場合は「舌痛症」といってストレスが原因の場合もあります。おかしいな?と思ったら、まずは歯科医院を受診し相談してください。原因と思われるものを一つ一つ除外しながら、必要があればほかの専門医と連携して治療にあたります。

6月22日掲載  歯科で用いられている金属は、お口の中に入ることを前提としているため、その安全性については、厳しい基準があります。それでもまれにではありますが、金属アレルギーを起こす場合があり、その代表的なものに「掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)」があります。
 特徴として、手のひらや、足の裏に左右対称に無菌性の水泡が多発します。そのため、大部分の方は皮膚科を受診されますが、原因菌は見つかりません。この時点で金属などのアレルギーが疑われ、大学病院のアレルギー外来を紹介されることもあります。
 掌蹠膿疱症は、唾液(だえき)に微量に溶け出した金属イオンとタンパク質が結合して皮膚に運ばれ、それが蓄積されることによって発症しますが、溶け出す金属イオンはごく微量なため一般的には問題ありません。
 発症する場合でも数十年かかることが多く、なかなか原因を特定できないこともあります。
 掌蹠膿疱症などの金属アレルギーが疑われる場合の検査法には、血液検査やパッチテストがあります。パッチテストは、可能性が疑われる金属成分を塗布したばんそうこうを腕や背中に張り付け、どの金属に皮膚が反応するかを調べます。
 これらの検査は、アレルギー外来がある大学病院など専門の医療機関で行われますが、原因となった金属が特定された場合、その金属を除去してアレルギーの出ない材料でやり直す必要があります。心当たりのある方はかかりつけの歯科医にご相談ください。

6月1日掲載  少子高齢化が進み、高齢者の医療制度の改革についてさまざまな議論がされている昨今ですが、ある2つの都道府県で65歳以上の高齢者について、口の中に残っている歯(残存歯)の数や歯周病の程度と生活習慣病(糖尿病、脳卒中、心疾患、高血圧など)との関連についての調査が行われました。
 その調査によると「歯をたくさん残すとその歯の治療にかかる歯科医療費は増大する」と思われていましたが、残存歯の数が多い人ほど歯科医療費は少なく、医科での生活習慣病に関わる来院数、医療費ともに減少していました。
 つまり、高齢になっても口の中の健康に気をつけて歯周病の重症化を予防し、できるだけ自分の歯を残すよう努めることが、歯科医療費の軽減だけでなく全身の生活習慣病の抑制につながり、全医療費の高騰をも防ぐことが分かったのです。
 われわれ歯科医師も、日々の診療の中で歯周病の悪性化の阻止や歯の保存に努め、80歳で20本の歯を残すという「8020運動」の精神を守りつつ地域住民の皆さまの健康な生活の一助を担っていきたいと考えています。

5月18日掲載  虫歯は、単一の要因で発生する病気ではなく、「摂取する糖分」「虫歯菌の量」「歯の質の弱さ」の三つの要因がかかわリ合い発症します。
 それら三つの要因に対して、シュガーコントロール、プラークコントロール、歯の質の強化という予防法がありますが、それらの中で歯の質の強化に強く関連しているフッ化物(フッ素)の利用について述べたいと思います。
 フッ化物は虫歯予防効果があるということはよく知られていますが、そのメカニズムについてフッ化物がどのようにかかわっているのでしょう。フッ化物は歯の表面から取り込まれ、歯を主に構成する結晶(アパタイト)の一部になり、そのフッ化物を含んだ歯は強い構造となって、虫歯菌の出す酸に対して抵抗性を持ち、虫歯になることを防ぎます。つまり脱灰されにくい歯の質となるのです。
 歯の周りにフッ化物があると、一度溶け出した部分を元通りにする再石灰化反応を促進します。最近の研究によるとこのフッ化物の再石灰化反応が、虫歯予防効果としては大きいといわれています。
 フッ化物の利用方法については主に三つあります。
 1、フッ化物入り歯磨き剤の使用=フッ化物の入った歯磨き剤で毎日歯磨きしましょう。
 2、フッ化物洗口=フッ化物の溶液でブクブクうがいをしましょう。
 3、フッ化物を歯に塗る(フッ化物歯面塗布)=フッ化物を専門家に定期的に歯に塗ってもらいましょう。
 これらの方法を上手に取り込むことが大切です。それぞれのライフステージや個人に合わせた使用方法や注意点などがありますので、詳細はかかりつけの歯科医院に相談し、虫歯予防に努めましょう。

5月4日掲載  離乳は6カ月ごろから開始し、1歳ごろが完了の目安でした。しかし母乳の場合は、母親に抱かれ乳房からもらうことによる安心感が基本的信頼関係を築く上で大切なことと考えられ、今では子どもが望むのなら2歳以上まで母乳を続けてもよいとされています。
 「虫歯ができないか心配」とよく聞かれますが、母乳そのものは虫歯の直接の原因ではありません。この時期でもやはり虫歯の要因は砂糖の過剰摂取(特に飲み物の中の砂糖)が主で、次がお口の清掃不良です。
 母乳を飲みながら寝ると、母乳が上の前歯の周囲に停滞します。しかも眠っている間は唾液(だえき)が少なくなって虫歯になりやすい状態になります。この時にお口の清掃が悪くてプラークがたまり、食べかす(特に砂糖を含むもの)が口の中に残っていると虫歯になる危険性が非常に高くなります。
 離乳の時期には、大人がとるような砂糖が入った飲み物やお菓子を最初から与えない、前歯が生えたら授乳、離乳食後に指に巻いたガーゼや綿棒で歯をふく、かむ面のある歯が生えたら歯ブラシを使って磨く、授乳後、食後ごとに歯を磨く−のが理想です。
 難しいようなら夕食後にしっかり磨き、ほかのときは水、またはお茶を飲ませ、すすぎの効果を得るようにするとよいでしょう。
 母乳が長引いて虫歯が心配な時は、ぜひ歯科医にご相談ください。

4月20日掲載  現在、子どもの歯科健診は1.6歳と3歳児に対して行われています。個人差はありますが1.6歳児で1216本、3歳児で20本の乳歯が生えています。1.6歳児健診で虫歯が見つかる子どももいますがその数はあまり多くはありません。しかし、3歳児健診になると多くの子どもに虫歯が見つかり、1回の健診で2、3人ではありますが全部の歯がむし歯という子どももいます。
 そのような子どもの口の中を見ると、小さい虫歯というよりはかなり進行し、すでに歯根の部分しか残っていないことが多いようです。子を持つ親の目から見ても、どうにかしてあげなければと感じます。
 子どもが歯科医院の門をくぐるときは健診がきっかけであったり、保護者が虫歯を見つけたり、痛みが出たりと来院理由はさまざまですが、痛みで泣きながら来院される子どももいれば、中には暴れる子どももいます。できてしまった虫歯は治療するしかありません。泣いて暴れる子どもを抑えて治療しなければいけないときもあります。
 保護者の方もそのような光景を見るのは切ないとは思いますが、わたしたちも切ない気持は一緒です。しかし、その子の成長やその後の歯並びを考えると気持を抑えて治療しなければいけないときもあります。確かに何回か通院するたびに泣くこともあると思いますが、そこを乗り越えて口の中がきれいになり痛みがなくなると診療台に一人で上がり、笑顔で帰って行きます。子どもも頑張っているので同行する保護者の方も頑張って子どもの成長を助けましょう。